お断りをするときは、より一層丁寧にする

 「あ、またベテラン君、君、ノーグッドやったよ、今。わかる?」

 「え?僕って本当に駄目なやつみたいですね。」

 「いや、いいんだよ。そうしないと、ほら話が進まな…いや、ごほん。いいんだ、ホントに。よくやっているよ。ただ、ちょっと抜けているだけで。」

 「はい。落ち込む気も失せて、握りこぶしを握っています。で、何をやっちゃったんでしょう?」

 「うん。今さ、ご予約の電話があったろ?もう夜までいっぱいだから当然断ったよね。そこだよ。」

 「あれ、うーんと、他の時間帯もご提案したし、他の店舗の空き状況も確認した。他のコースも提案した、で、全部駄目でした。で、【あー、駄目ですね。それではお取りできません】とお断りしたんですが、他にも確認すべきことでもあったでしょうか?」

 「いや、いいんだよ。確認はそれでいい。でもね、お断りするときのセリフと声のトーンがよろしくない。というか非常に悪い。ちょっと再現してみて。」

 「はい。【ああ、そうですかぁ、ではちょっと無理ですねっ。ええ、はい、それだとお取りできないんですよ。はい、はい、はい、どうもすみませ〜ん。】という感じだったでしょうか。いけませんか?」

 「あー、もう君は一体僕の何を見てきたんだよ。息ができなくなって死んじゃいそうだ。いいかい。君は全然【申し訳ない】って思ってない。例え思っていたとしても全然伝わってない。【こちらにもっとスタッフがいれば】【もっとベッドがあれば】【もっとうまく予約を重ならないように取っていれば】その方の予約を入れられたかもしれない。せっかく【よし行こう】と決断して連絡してきてくださったのにお取りできないわけだ。それはもう【申し訳ございません】という気持ちにならないのがおかしい。君はどこか【いっぱいなんで、取れないんですよ。しょうがないでしょ】っていうオーラが出る。これはね、そう思っていたら絶対に出るから。」

 「う、うう、あ、はい、思ってますね。お断りするときは。こちらが悪いとは思ってなかったと思います。」

 「君は素直なところが救いだよ。でさ、今度ベテラン君にね、やっと彼女ができたとするじゃない、で、デートに行くことになるわね。君としてはできればできるだけ素敵でおいしくて安くてという無理難題をクリアしちゃいそうなレストランをネットで調べたりして見つけて自分の株を上げたかったりするわけさ。で、見つけるわけだ。クチコミもいい。なにせコストパフォーマンスも高い。僕の給料でも十分いける。みたいな。で、【ここだ!】と思って電話をかけるのさ、そしたら【え、あー、12日の金曜ですか、いやもういっぱいなんですよね。ええ、ええ、ちょっと取れないですねー。ええ、どうもはいー。】と言われちゃう。これ、どう?ちょっとトーンまで伝わらない?いや、そこは想像してね。」

 「うーん。【え〜っ!】って思いますね。というか【もういいよ】くらい思っちゃうかも。というかもう行こうとしないかもしれません。」

 「根に持つからね。」

 「え?」

 「いや、冗談冗談。」

 「でもね、それがさ【え、あー、12日の金曜日ですか〜。すみませーん。実はもうご予約で埋まってしまいまして、ええ。いや、どうもごめんなさいお取りできなくて。ええ、はい、ぜひ次回またよろしくお願いいたします。申し訳ございませんでした。】という感じだったらどうだい?トーンは想像しておくれよ。」

 「あー、そういう感じだったら【いやいやいやいや、いいんです。私ももっと早くお電話すればよかったと思います。人気なんですね。ええ、ぜひ次回はもう少し前に予定を立てて伺いたいと思います。はい。そのときはぜひこちらこそよろしくお願いいたします。】と言っているかもしれません。」

 「ね、実質的には同じことを言っていたとしても、伝わり方が全然違うわけさ。だからね、特に断るときは気をつけて。【断る】ってことはどちらかというとこちらが少し強い立場な気がしちゃうもの。でも、本当はそうじゃないんだよ。こちらは【取れなくてすみません】という立場なんだ。そう思っておいてね。」

 「わかりました。今あまりタイプじゃない女性に告白されたところなんですが、【お前となんて付き合えないよ。全然そんな気になれない関係じゃん、もう。友達だしさ】って答えるところでした。危なかったです。【どうもありがとう。気持ちはとっても嬉しい。今はその気持ちには応えられないけど、できたら長く付き合える素敵な関係でいたいと思っているよ。それでは駄目かな?】と言うことにします。同じことかもしれないですが、言い方ですね。これも。」

 「それはぜひとも後者でいってくださいな。世界の女性を敵に回す前に。」

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