何で待っているのかを教える

 「院長、もしかして他にもお客さんのためになる秘密のアイテム持ってませんか?」

 「アイテムぅ?なに、ええとロトのなんとかとか?」

 「いやゲームのやりすぎですよ。ロトの紋章とかでしょ?」

 「いや、LOTO6だよ。やったことないけど。と、まあいいとして。お客さんに気を遣ってすることね、ええとね。意識してやっていることとしては、【私は何を待っているのか】をお教えする。ってのがあるね。」

 「その【私】ってお客さんですか?」

 「そうそう。お客さんに待っている意味をお教えするってことさ。」

 「ええとイマイチ意味がわからないんですが。」

 「うん。つまりさ、受付でね座ってもらってさ、【ではお待ちください】って言うことあるでしょ。そのときのお客さんの心理状況としては、まあ普通に【ああはい、わかりました】ってのが一番だと思うんだけど、他にも【いつまで待つのかな】とか【何で待つのかな】とか【待っている間何してようかな、てかそんな時間あるかな。あ、トイレくらい行くか。あ、でもすぐに呼ばれるかな】とか結構いろいろ思ったりすると思うんだよね。いろいろ考えるって実はそこそこストレスになってね、だったら最初から【こういうことなのでお待ち下さい】って言って差し上げるのさ。」

 「なるほど、余計なことを考えずに済むと。」

 「そうそう。だってただ【お待ち下さい】と【すぐにベッドを直してきますのでお待ちください】もしくは【次の方が終わるまで10分ほどお待ち下さい】じゃあずいぶん待つ側の心構えも違うでしょ。」

 「ですね。ベッドを直すというのなら、【あ、すぐかな、じゃあまあ携帯いじることもなく、インテリアでも見ていよう】とか思えるし、【10分待つのか、まあ早く来ちゃったからな、だったらトイレにでも入っておくか】とか思えますもんね。」

 「そういうことです、そういうことです。何でもそうだけど理由を言ってもらうとスッと気持ちよくなれるんだよね。つかえがなくなるというか。」

 「ありますねー。この間レストランの予約取ろうとしたら断られたんですが、【すみませんお取りできないんです】と言われた時点では【え〜】という感覚だったのですが、【金土の夜はいつも混みあいまして】と言われたら【そりゃそうだよねえ】と妙に納得してしまいました。まあ考えてみたら当たり前なんですけど。」

 「そうだね、当たり前でも納得できちゃうんだよね。実はある実験をした学者さん達がいてね、その話なかなか面白いんだけど、コピーを取るのに、有料のコピー機の前でコピーを取っている人に先にコピーを取らせてくれないかとお願いするという実験でね、2つの異なる言葉でお願いしたんだ。一つは【先にコピーを取らせてもらえませんか?】でもう一つは【先にコピーを取らせてもらえませんか?なぜならコピーを取らなくてはいけないので。】という言い方なんだ。」

 「え?後者のほう、意味がないというか、意味が当たり前というか、理由になってないですよね。だってコピーを先に取る理由がコピーを取らないといけないから、なんてアホなんですか、この人?」

 「いや、まあ君ほどじゃないと思うよ。これはね、実験だから、そこ理解して。でもね、まあ実はそこが奇妙なところなんだ。理由が理由になってない。つまりそんな理由じゃあ先に取らせてあげよう、なんて思わないだろうと推測できるじゃない。でもね、結果は面白くて、実は後者のほうが全然多くの人が先にコピーを取らせてくれたそうなんだよ。」

 「ええ!なんとなくそう来るんじゃないかと読んじゃいましたが、やっぱりそうなんですか?」

 「そういうところだけは読めるんだね。かわいくない人種だよ。で、まあそう、そうなんだ。理由が別に正当かどうかは実はあまり関係なかったと。【理由】みたいなものがあっただけでよかったんだ。内容はあまり検討されなかったと。まあつまりだから何が言いたいかというと、理由を言うということは大事だよってことだ。まあだからってこの例のように意味のない理由を言っちゃだめだよ。これはあくまで実験だから。」

 「そうですね。それはさすがにそうします。」

 「あとね、この間さ、【ベッドが埋まっていてお取りできないんです】って歓送迎会の日、ほら1時間早く店じまいした日ね、あのときそういってお断りしていたでしょ。別にあれ、そんなこと言う必要ないよ。だってその理由は嘘だから。別に歓送迎会して悪いことないじゃない。お店が10時まででその後片付けして、お店に行くのが11時じゃあ遠くに住んでいるスタッフは1時間といれない。だから1時間早く閉める。それはね、僕はいいと思ってやっているんだ。それが駄目だという考え方もあるだろうけど、もし僕が【駄目だ】と考えたらそもそも歓送迎会はなし、にしているだろうから。うちはお客さんに対しても、スタッフに対しても嘘のない運営をしていきたいんだ。そこは理解しておいてね。」

 「すみません、なんだか勝手なことしちゃいました。」

 「いや、いや、すまない、良かれと思ってしたことなんだろうから別に謝らなくてもいいさ、誰にも迷惑かかってないし。でもまあ今後はそうしようぜ、って話ね。」

 「わかりました!」

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